白内障手術への不安についてアンケートを行ったところ、「問題なく見えるようになるのか」「痛みはあるのか」「合併症や後遺症のリスク」への不安が多く聞こえてきました(※)。目の手術はやはり怖いもので、なかなか手術に踏み切れないという方も多いようですね。
不安材料はなるべく排除し、納得したうえで手術に臨みたいものです。そこで今回は白内障手術を検討している方が抱える悩みについて、眼科医の渡邊敬三医師にお話を伺いました。
年間700件の症例数を有する「南大阪アイクリニック」の院長を勤める渡邊先生(2020年度実績)。新しい機器の導入や研究を貪欲に続けられてきたその知見の深さから、オウンドメディア「白内障LAB」の監修やYouTubeチャンネルにて、白内障手術に関する情報を提供。2020年には著書(※)を上梓するなど、日々白内障や白内障手術の正しい知識の発信に取り組んでいる。
------やはり手術というと、失敗がつきものだと思います。白内障は手術をすれば、問題なく見えるようになるものなのでしょうか?
渡邊先生
まず、最初に申し上げたいのが、白内障の手術で「失敗」するケースはほとんどないということ。
白内障手術は年間に約150万件行われている、きわめて精度の高い手術なのです。
しかし、一方で「見え方が手術前と変わらない」という方がいらっしゃるのも事実。その主な理由である3点についてご説明します。
第一に、「屈折誤差」という手術後に希望していた距離にピントが合わない症状があります。ピントが合う位置がずれてしまうと、手術前に思い描いていた見え方にならないということが起こってしまいます。白内障手術の成功のカギは、術後にこの屈折誤差をいかに小さくできるかにあります。
そのため、「どの距離が見えるようになりたいのか」「メガネなしで生活をしたいか」など、術後の理想イメージを担当医と納得いくまで相談し、きちんと情報共有をしておくことが大切です。
強い乱視や他の目の疾患を持つ場合などは、思っていたほどの効果が得られないと感じることがあります。症状について事前に担当医に相談し、手術をしたらどうなるのか、しっかり聞いて理解しておくことが大切です。
乱視持ちの方は、乱視矯正レンズを使用するのか担当医と相談するようにしましょう。
最後に「よく見えているのに勧められるがままに手術をしてしまった」という理由です。メガネをかければ見えるにも関わらず、「見えにくくなった」とだけ医師に伝え、言われるがままに白内障手術を受けてしまうケースもあります。
結果として、術後にも裸眼では見えにくく、メガネでの生活を送ることになります。原因としては、手術をする時期が早すぎたり、屈折誤差(希望していたピントが合っていない)が生じてしまっていることが考えられます。
渡邊先生
人生で白内障手術を受けるのは一度きりです。
だからこそ、ご自身の目の状態をよく知ったうえで手術を受けることをお勧めいたします。
白内障手術に関する理解を深めるためにも、手術を受ける時期や手術方法、眼内レンズ選びなどは担当医とよく相談しましょう。
-----理想の見やすさを手にいれるには、担当医と相談することが大切なのですね。しかし、やはり手術の痛みが不安で、治療をためらってしまいます。
渡邊先生
手術を行うことで痛みに不安を感じることはもちろんあるかと思います。しかし、手術の際は麻酔の目薬を点眼するため痛みを感じることはほとんどありません。
実際、白内障手術は受けた方の多くが「あっという間に終わった」と感じるほど短時間で終了し、手術中の痛みを訴える方もほとんどおられません。
もう少し詳しくお話しますと、白内障手術で使用する麻酔には点眼麻酔と注射による麻酔があります。消毒後に目薬による点眼麻酔を行い、痛みはほとんどない状態で手術は進んでいきます。
手術を受けた方の感想の多くは、「手術前の消毒で少ししみた」や「術後のドレープ(術眼以外をおおう清潔な布)をはがすときに少し痛みがあった」程度です。どうでしょうか?これなら痛みに対する不安も少し払拭されるのではないでしょうか。
当院では、万が一手術中に痛みを感じるようであれば、「痛い」と言っていただければ麻酔を追加することが可能ですので、安心してください。声をかけながら手術を進行していきますのでリラックスして手術を受けていただけます。
-----なるほど、手術中の痛みはほとんどないのですね。では術後に痛みは生じるのでしょうか?
渡邊先生
手術で生じる傷は2mmほどと非常に小さいため、強い痛みが生じることは稀です。
手術当日はゴロゴロする感覚や涙が出ることもありますが、ごく一般的な反応です。
もし術後に痛みを感じる場合は、痛み止めの処方を受けることもできます。自宅にある鎮痛剤を服用しても問題ありませんので、必要に応じて使用してください。
ただし、手術の翌日以降に急に目の痛みが激しくなったり、見えにくさを感じたりしたら注意が必要です。手術後の高眼圧や術後眼内炎などが疑われますので、その場合はすみやかに医師の診察を受けるようにしてください。
-----白内障手術による合併症や後遺症が発生するリスクについて教えてください。
渡邊先生
医療技術の目覚ましい進歩もあり、短時間で受けられる白内障の手術は、安全性に配慮された手術です。
しかし、どの手術においても同じように、合併症や後遺症リスクがゼロというわけではありません。
白内障手術の合併症や後遺症のリスクとして挙げられるのが、感染(眼内炎)、眼内レンズ挿入不可、術後屈折誤差、後発白内障などがあります。
感染症では手術中や術後、眼内に細菌が侵入することで強い炎症がまれに起こることがあります。手術の3日後~1週間後に急激に視力の低下が認められたり、目やに・充血やひどい痛みを感じたりと、異変に気づいた際には早めに医師に相談しましょう。
それから、後発白内障といって、術後数ヶ月〜数年経つと眼内レンズを収めている水晶体嚢が濁り、白内障と同じような症状が出ることがあります。こちらは専用のレーザーで濁りを飛ばせば手術直後の見え方に戻ります。
上述したように術前に決めた眼内レンズのピントの位置がずれる術後屈折誤差というものがありますが、これをカバーするためには質の高い手術前・手術中検査が必要不可欠であり、受診した医療機関の質によって回避できるリスクです。
当院が導入しているフェムトセカンドレーザーでは、コンピューター制御により微細なズレが生じにくく、どの医師が担当しても一定の技術を担保してくれます。そのため、上記のような後遺症のリスクを減らすことができます。
────合併症や後遺症のリスクを回避するために、患者ができる最も重要なことは何でしょうか?
渡邊先生
確かな技術と経験を備える、信頼できる医師に依頼することが大切です。
白内障手術は安全性に配慮された手術とはいえ、合併症や後遺症がゼロとは言い切れませんので、これらのリスクをできるだけ避け、且つ10年後、20年後も快適な生活を送るためにも、医師選びで妥協しないことが最も重要だと考えています。
渡邊先生
白内障は手術を受けることで多くの場合治りますが、大切なのは、「治る、治らない」ではなく、「どう治るか」なのです。
残りの人生、5年であろうが、40年であろうが、ずっと気持ちよく見えてほしい。心からそう願っています。なぜなら快適に見えることは、QOL(生活の質)の基盤になるからです。
だからこそ、「よくわからないから」と投げやりになったり、「痛そうだから」と目を逸らさないでいただきたいのです。理想の術後の見え方を叶えるために、患者様やご親族がしっかりと情報を得て、適切な医療機関選びをできるようになってほしいと願っています。
白内障手術に対する不安のほとんどは、起こってしまうかもしれないネガティブな発想から生まれるものです。患者様が抱える具体的な不安の内容さえ分かれば、医師がその不安を取り除く方法や答えを導いてくれますよ。
白内障の手術を受けた後にある、大きな感動や快適な生活のために、妥協しない眼科選びを是非してほしいと思っています。
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