多焦点眼内レンズの寿命(耐用年数)とは

多焦点眼内レンズの基本的な寿命

白内障手術で挿入される多焦点眼内レンズは、基本的に「一生涯使い続けることができる」とされています。実際、素材として使用されているアクリルやシリコンなどは非常に安定しており、劣化がほとんどないため、長年にわたって視機能を保つことができます。先天性白内障で小さな子どもに挿入された場合でも、基本的には一生持つと考えて差し支えありません。

寿命に関わる例外的なケース

ただし、以下のような特殊な事情により、多焦点眼内レンズでも交換が必要になることがあります。

レンズの脱臼

水晶体嚢を支えているチン小帯が何らかの原因(落屑症候群、強度近視、外傷など)で損傷すると、眼内レンズが所定の位置からずれてしまう「眼内レンズ脱臼」が発生することがあります。この場合には、硝子体手術でずれたレンズを摘出し、新しいレンズを眼内に縫い付ける必要があります。ただし、発生頻度は非常に低く、多くの人には無縁です。

レンズの混濁

レンズが時間とともに白く濁る「グリスニング」や「ホワイトニング」といった現象もあります。視界に支障が出るほどの混濁は稀ですが、レンズの材質によっては報告例があり選択する際には注意が必要です。最近のレンズではこの問題はかなり改善されています。

度数や種類の再選択

手術後に「見え方が思っていたのと違う」と感じる場合や、「多焦点にしておけばよかった」と後悔するケースもあります。こうした場合には、眼内レンズを交換する選択肢も存在します。また、術後の屈折誤差が想定より大きい場合には、視力補正のために交換を検討することもあります。

手術後の注意点と医師選びの重要性

眼内レンズは基本的に安定しており、日常生活でずれたり壊れたりすることはほとんどありません。ただし、目を強くこするなどの行為は避け、アレルギーなどがある場合はきちんと対処しておくことが大切です。特にチン小帯が弱い方や嚢の状態が不安定な方の場合、手術自体に高度な技術が求められるため、硝子体手術にも対応可能な経験豊富な医師を選ぶことが重要です。

後悔しない眼内レンズ選びを

眼内レンズは一生付き合っていくものです。最近では、多焦点や乱視矯正対応、より自然な見え方を実現する高機能レンズも登場しています。将来の生活スタイルやニーズを見据えたレンズ選びが、快適な視界と生活の質を支えてくれるでしょう。

まとめ

多焦点眼内レンズは基本的に一生物で、安心して使用できます。稀に交換が必要となることもありますが、よく起こることではありません。だからこそ、最初の選択が重要です。手術を受ける際には、自身に合ったレンズを慎重に選び、信頼できる医師としっかり相談することが、満足のいく結果につながります。