黄斑前膜患者の白内障手術と多焦点眼内レンズ

加齢と共に目の神経である網膜の「黄斑」に膜が張り付く「黄斑前膜」という病気のリスクが増大します。黄斑前膜の治療では白内障手術を同時に行うことも多く、そのような際に多焦点眼内レンズが選択されることもあります。

ただし多焦点眼内レンズにも複数の種類があり、黄斑前膜の人が多焦点眼内レンズを使用する場合、まずは自身の状態や手術適応について確認することが重要です。

「黄斑前膜」とは?

眼球の中にある網膜は目の神経として視力に重要な役割を果たしていますが、その網膜の中でも特に重要な部分が「黄斑」です。黄斑は網膜の中心に位置する部分であり、黄斑が損傷したり、黄斑に膜などが張り付いて光がきちんと通らないようになったりすると、視力低下や目の機能以上を引き起こすことになります。

また黄斑に関する疾患には複数のものがありますが、一般的に最も多い症状が黄斑に膜が張り付く「黄斑前膜」です。

黄斑前膜の主な症状

黄斑前膜は中高年に多く発症しやすい黄斑疾患であり、ものの見え方が歪んだり、ものが異常に大きく見えたりといった自覚症状が知られています。一方、進行速度がゆっくりであるため、なかなか異常に気づきにくく、自覚症状が出た時にはある程度症状が進行していることも少なくありません。

適切な治療によって症状の軽減や視力維持が望める反面、治療しなければ状態が改善しないことも重要です。

黄斑前膜があると多焦点眼内レンズは推奨されないのか?

黄斑前膜は症状の程度によって経過観察になることもありますが、治療法としては原則として手術のみとなります。また黄斑前膜の治療は硝子体手術が必要ですが、硝子体手術だけを行うと白内障の進行を誘発するリスクがあるため、一般的に白内障手術も同時に行います

ただし黄斑前膜の治療に伴って白内障手術をする場合、特に多焦点眼内レンズを使おうとするとレンズの種類を厳密に選定しなければなりません。

黄斑前膜で多焦点眼内レンズが「非適応」となるケース

前提として、眼内レンズによる白内障治療や視力回復には、網膜や黄斑の機能が健全に維持されていることが必要です。一方、黄斑前膜に伴って多焦点眼内レンズを使用する場合、同じ多焦点眼内レンズでも「回折型多焦点眼内レンズ」と「焦点深度拡張型多焦点眼内レンズ」の違いを理解しなければなりません。

通常、見え方の質が良いとされる焦点深度拡張型多焦点眼内レンズであれば適応になる可能性がある反面、回折型多焦点眼内レンズは黄斑前膜の患者に対して非適応となります。

黄斑前膜と診断された方の選択肢

白内障との「同時手術」という選択肢

黄斑前膜の手術ではしばしば白内障手術を併用するため、白内障手術の内容についても主治医と相談しなければなりません。

適したレンズは「単焦点眼内レンズ」

見え方の質に関して言えば、黄斑前膜の治療には網膜への負担を最小限に抑えられる単焦点眼内レンズが最適です。またどうしても多焦点眼内レンズを検討する場合、焦点深度拡張型多焦点眼内レンズが推奨されますが、そもそも多焦点眼内レンズが適応になるのか主治医へ相談して考えることが必要です。

後悔しないための白内障手術

黄斑前膜の患者にとって白内障手術の併用は一般的ですが、白内障手術にも複数の選択肢があります。そのため、そもそも黄斑前膜というリスクや症状があることを踏まえて、どのような白内障手術や眼内レンズを選ぶべきなのか、主治医としっかり話し合って考えるようにしましょう。

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