白内障手術はやり直しが可能?

水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入する白内障手術。ほとんどの方は、一度手術を受ければ問題ありませんが、場合によっては再手術が必要です。ここでは、白内障の手術が必要なケースやリスク、再手術の流れについて解説します。

白内障手術は再発するのか

白内障は手術を受けると再発しません。これは、手術で白内障の原因である水晶体を取り除き、代わりに眼内レンズを挿入するためです。

通常は一度の手術で済みますが、レンズとの相性や見え方によっては再手術が必要になることもあります。

白内障の再手術が必要になる場合

眼内レンズの度数ズレが起きている

白内障の再手術が必要なケースとして、眼内レンズの度数ズレが挙げられます。通常、白内障手術の前には眼や角膜を細かく検査し、そのデータを元に眼内レンズの度数を決定します。しかし、検査結果の予測と実際の度数にズレが生じてしまうケースがあります。

眼内レンズの度数ズレが起こった場合、再検査を実施して適正な度数のレンズに交換しますが、眼内レンズによる視力の矯正には限度があります。医師としっかり相談し、再手術の可否を判断しましょう。

脱臼・亜脱臼

白内障手術で挿入された眼内レンズがズレる(亜脱臼)または目の中に落ちる(脱臼)状態を示します。

脱臼・亜脱臼の原因

主な原因は加齢や外傷、強い近視などで、水晶体を支える繊維(チン小帯)が弱くなることです。

治療法

亜脱臼の場合、見え方に影響が少ないなら経過観察しますが、大きくズレた場合は手術で修正します。脱臼した場合は、硝子体手術でレンズを取り出し、新しいレンズを挿入します。レンズの固定方法としては、レンズを目の外側の膜に縫い付けたり、目の壁に作った小さな穴にレンズをはめ込む方法があります。

単焦点レンズを多焦点レンズにしたい

最初の白内障手術で単焦点レンズを埋め込んだ後、多焦点レンズへ交換したい場合も再手術が求められます。眼内レンズは、コンタクトレンズのように気軽に交換することができません。レンズの種類が異なりますので、現在のレンズを摘出し、別のものを再挿入する必要があります。

多焦点レンズは広い範囲に焦点を合わせられる反面、コントラスト低下やハロー・グレアなどのデメリットも存在します。単焦点レンズとは見え方が大きく変わりますので、交換は慎重に判断しましょう。

眼内レンズがあっていなかった時の対処法

レンズの交換

白内障手術後、思ったほどの視力が得られなかった場合、対処法の1つに「眼内レンズの交換」があります。眼内レンズの入れ替え自体は可能ですが、初回手術後1ヶ月ほどで眼内レンズと眼の組織が癒着しはじめてしまうため、再手術が必要となった場合にはできるだけ早く手術日程を決めることをおすすめします。癒着が進んでしまうと、手術の難易度が高くなります。

レーシックによる微修正

白内障手術後の視力の微調整には、レーシックが用いられることがあります。これは、視力の小さな誤差を修正するための手術であり、近視・遠視・乱視を矯正することができます。ただし、角膜の厚さが十分であることが前提条件です。

メリット

  • 視力の微調整が可能で、理想的な視力に近づける。
  • 手術時間が短く、痛みも少ない。
  • 比較的低コストで行える。

デメリット

  • 角膜を削るため、再生が不可能であり、修正がきかない。
  • 術後に視力が戻る可能性がある。
  • 一時的なドライアイや夜間の視力低下(ハロー・グレア)などの副作用が生じる可能性がある。

アドオン眼内レンズ

最近注目されている方法として、「アドオン眼内レンズ」があります。これは、既存の眼内レンズを取り出さずに、新たにもう一枚のレンズを追加で挿入する方法です。この追加のレンズにより、白内障手術後の視力をさらに調整することが可能です。

メリット

  • 既存のレンズを残したまま、視力を調整できる。
  • 角膜を削る必要がないため、視力の質が保たれる。
  • レンズは取り出し可能で、元の状態に戻すことができる。

デメリット

  • 保険が適用されず、全額自己負担となる。
  • 多焦点レンズのように、光が眩しく感じる(ハロー・グレア)ことがある。
  • 完全に視力が矯正されず、わずかに視力の不具合が残ることがある。
  • 自然な見え方になるまでに、数ヶ月を要することがある。

再手術のリスク

白内障の再手術は、基本的に自由診療です。健康保険が適用されませんので、手術費用は全額自己負担する必要があります。前回の手術より費用が高くなることに注意しましょう。

また、再手術に伴う感染症や合併症のリスクもあります。再手術を受けた後は、しばらく安静に過ごせるよう環境を整えておきましょう。なお、前回の白内障手術から時間が経っている場合、再手術ができない可能性もあります。再手術を受けたい方は、医師としっかり相談しましょう。

再手術の流れ

白内障の再手術の流れは次のとおりです。

  1. 診断・術前検査
    再手術の可否の診断や、眼内レンズと水晶体嚢の癒着、前回の手術方法などの検査を行う
  2. 再手術
    古い眼内レンズを摘出し、新しい眼内レンズの挿入や位置の調整を行う
  3. 定期検査
    クリニックから指示された頻度で検査を受け、眼内レンズの状態を点検してもらう

基本的な流れは、通常の白内障手術とほぼ同じです。最初に診断・検査を行って再手術の可否や眼の状態を確認し、眼内レンズの度数などを決めたら再手術を行います。手術後は定期検診を受け、眼の状態をチェックしてもらいましょう。

まとめ

白内障は通常再発することはありませんが、様々な理由で再手術が必要となる場合があります。主な理由として、眼内レンズの度数ズレ、単焦点レンズから多焦点レンズへの交換希望、眼内レンズの脱臼・亜脱臼などが挙げられます。眼内レンズが合わない場合の対処法としては、レンズの交換、レーシックによる微修正、アドオン眼内レンズの使用などがあります。

再手術にはそれぞれメリットとデメリットがあり、費用や合併症のリスクを慎重に検討する必要があります。再手術の流れは通常の白内障手術と類似していますが、術前の診断と検査が特に重要となります。不安を感じたり、より良い視力を希望する場合は、まずは医師に相談してみるといいでしょう。

監修者情報

松本行弘 医師
多焦点眼内レンズの豊富な知識と経験を有する医師
松本理事長写真写真引用元:アイケアクリニック公式HP(https://eye-care-clinic.jp/doctors)

年間2000件を超える白内障手術実績を有する「アイケアクリニック」の松本医師。(2023年10月1日調査時点)。患者の「見え方」に対する幅広いニーズに対応するため、20種類以上の多種多様な眼内レンズを用意しています。
その知見の深さから、公式Youtubeチャンネル(※)で、白内障手術や多焦点眼内レンズの正しい情報発信にも取り組まれています。

※公式youtubeチャンネルへ遷移します。

    経歴
  • 獨協医大越谷病院 眼科
  • University of Maryland, Department of Ophthalmology, Research Fellow
  • University of Washington, Biological Structure, Visiting Assistant Professor
  • 獨協医大越谷病院 眼科 准教授
  • 獨協医大越谷病院 眼科 緑内障・黄斑・PDT・角膜の各専門外来主任
  • を歴任

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