「最近、片目だけ白内障が進行して見えづらい…」
「どうせ手術するなら老眼も一緒に治して、メガネなしで生活したい」
「でも、片目だけ多焦点レンズにしたら、左右で見え方がおかしくならないか不安…」
このように、片目の白内障手術を前に、期待と不安が入り混じった気持ちを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、片目だけの白内障手術で「多焦点眼内レンズ」を選ぶことは可能なのか、そしてその場合に知っておくべきメリット・デメリットについて詳しく解説します。
まず、読者の皆様が一番知りたい疑問「片目だけでも多焦点眼内レンズ手術はできるのか?」にお答えします。
答えは「手術自体は可能」です。
ただし、すべての人に無条件でおすすめできるわけではなく、もう片方の目の状態やご自身のライフスタイルを考慮した、慎重な検討が必要になります。
なぜなら、私たちは普段「両目」で見ることで、ものの立体感や距離感を正確に捉えているからです。片目だけ手術した場合、左右の目でピントの合い方が異なるため、脳がその見え方に順応するまで少し時間が必要になることがあります。そのため、医師と十分なシミュレーションと相談の上で決定することが非常に重要なのです。
慎重な判断は必要ですが、片目だけでも多焦点眼内レンズを選ぶことには、生活の質を大きく向上させるメリットがあります。
最大のメリットは、メガネを使う頻度を大幅に減らせる可能性です。
多焦点眼内レンズは、1枚のレンズで遠くと近く(または中間距離)の両方にピントが合うように設計されています。手術した方の目で遠くの景色も、手元のスマートフォンの文字も見えるようになるため、老眼鏡や遠近両用メガネに頼る場面が格段に少なくなります。
レストランのメニューや、買い物中の値札など、ふとした瞬間にメガネをかけ外しするストレスから解放されるのは、大きな魅力と言えるでしょう。
白内障は加齢に伴う変化であるため、今は健康な方の目も、将来的に白内障手術が必要になる可能性が高いです。
その際、両目とも多焦点眼内レンズを選択することを視野に入れるのであれば、片目ずつ手術する場合でも、早期にメガネの少ない快適な生活へ移行できることになります。長期的に見れば、遠近両用メガネを何度も買い替えるコストなどを抑えられる可能性もあります。
裸眼で過ごせる時間が増えることで、生活の質(QOL)は大きく向上します。
例えば、ゴルフやテニスなどのスポーツを楽しむ際、ボールと手元(スコアカードなど)の両方が見やすくなります。運転中にカーナビと遠くの標識を交互に見る際もスムーズです。また、手元での細かい作業や料理など、日常のあらゆる場面で視界がクリアになり、趣味や仕事により一層集中できるようになるでしょう。
一方で、片目だけ多焦点レンズを選ぶ際には、必ず理解しておかなければならないデメリットや注意点もあります。
最も懸念される点であり、多くの方が不安に感じる部分です。
手術していない方の目(または単焦点レンズを入れた目)と、多焦点レンズを入れた目とでは、ピントの合い方や見え方の質が異なります。そのため、手術直後は左右の見え方にアンバランスさを感じたり、違和感を覚えたりすることがあります。
ほとんどの場合、時間とともに脳が順応していきますが、慣れるまでには個人差があることを理解しておく必要があります。
多焦点レンズは、光を複数の焦点に振り分けるという構造的な特性上、「ハロー・グレア」と呼ばれる現象が起こることがあります。
これらの見え方も徐々に慣れていくことが多いですが、特に夜間に運転する機会が多い方は、ご自身の生活スタイルと照らし合わせて検討する必要があります。
健康保険が適用される単焦点眼内レンズとは異なり、多焦点眼内レンズを用いた手術は原則として「選定療養」の対象となります。
これは、保険適用の白内障手術費用(診察・検査・手術・薬代など)に加えて、多焦点眼内レンズのレンズ代金分が全額自己負担として追加で発生することを意味します。レンズの種類によっても異なりますが、単焦点レンズの手術に比べて自己負担額は大きくなります。
多焦点眼内レンズは、誰にでも適応となるわけではありません。
例えば、緑内障や網膜疾患、強度の乱視など、白内障以外の目の病気がある場合は、多焦点レンズの特性が活かせない、あるいは不向きと判断されることがあります。
また、プロのドライバーやデザイナー、カメラマンなど、非常に精密な色のコントラストやクリアな見え方を職業上求められる方にも、単焦点レンズの方が適している場合があります。
では、具体的にどのような場合に片目だけの多焦点レンズ手術が選択肢となるのでしょうか。
片目の白内障は進行しているものの、もう片方の目はまだ健康で視力も良好な場合です。特に、老眼による手元の見えづらさも同時に改善したいと考えている方に、片目だけの多焦点レンズは有効な選択肢となります。
すでにもう片方の目を単焦点レンズで手術している場合でも、後から手術する目に多焦点レンズを入れる「ミックス&マッチ」という手法があります。
例えば、先に手術した目で「遠く」にピントを合わせた単焦点レンズを入れ、後から手術する目で「近方(または遠近両用)」の多焦点レンズを入れることで、両目で見える範囲を補い合い、メガネへの依存度を減らすといった調整が可能です。
加齢ではなく、外傷(ケガ)などが原因で片目だけ若くして白内障になるケースもあります。まだ老眼が始まっていない世代の方でも、将来的な生活を見据え、メガネやコンタクトレンズなしの生活を強く希望される場合に、多焦点レンズが検討されることがあります。
片目だけの多焦点眼内レンズ手術は、非常に繊細な判断が求められる選択です。後悔しないためには、信頼できる医師・クリニックを選ぶことが何よりも重要です。
以下のポイントを参考にしてください。
一番大切なのは、あなたの目の状態とライフスタイルに合ったレンズを選ぶことです。
片目だけの白内障手術に関する不安や疑問は、決して一人で抱え込まないでください。まずは一度、経験豊富な眼科医に相談し、ご自身の希望をしっかりと伝えた上で、最適な治療法を一緒に見つけていきましょう。