多焦点眼内レンズと高額療養費制度

多焦点眼内レンズとは?最新トレンドと仕組み

多焦点眼内レンズは老眼や白内障の治療に用いられるレンズで、近くも遠くもはっきり見えるというメリットがあります。単焦点レンズとの最大の違いは、眼鏡に依存しない生活が実現しやすい点です。

2025年現在、レンズの性能は飛躍的に進化しており、以下のような高機能レンズが注目されています。

  • ライトアジャスタブルレンズ:術後の紫外線照射で焦点を微調整できる革新的なレンズ
  • EDOF(焦点拡張型)レンズ:ぼやけを軽減し、自然な見え方を再現するレンズ
  • トリフォーカルレンズ:遠・中・近の3焦点に対応し、日常生活の快適さを向上させるレンズ

これらの手術は「人生が変わる手術」として話題ですが、費用はレンズの種類や手術方法によって大きく異なります。まずは複雑な「3つの診療区分」を理解することが重要です。

費用が決まる「3つの診療区分」を理解しよう

多焦点眼内レンズの手術費用は、どの制度(診療区分)を利用するかによって負担の仕組みが大きく変わります。

① 選定療養(最も一般的なパターン)

対象となるケース

厚生労働省が認可した多焦点眼内レンズを使用する場合に適用されます。現在、20種類以上のレンズが対象として承認されています。

費用の内訳

「保険診療」と「自費診療」を組み合わせて行う制度です。
手術の基本部分(検査、手術技術料、薬代など)は保険が適用され、1〜3割負担となります。一方、多焦点レンズの追加費用(差額代金)は全額自己負担となり、片眼あたり10万〜40万円程度が目安です。

メリット

基本部分に保険が効くため、完全自費に比べて総費用を抑えられます。また、多くの医療機関で対応しており、後述する高額療養費制度も「部分的に」利用可能です。

② 自由診療(完全自費)

対象となるケース

国内未承認の最新レンズを使用する場合や、フェムトセカンドレーザーを用いた特殊な手術を行う場合に適用されます。

費用の仕組み

健康保険証は使用できず、検査・手術・レンズ代すべてが10割(全額)自己負担となります。費用の目安は片眼30万〜80万円程度と高額になります。

注意点

高額療養費制度は一切使えません。ただし、より高性能なレンズや精密な治療を希望する場合に選ばれています。

③ 例外:保険適用の多焦点レンズ

過去には保険適用されていたレンズもありましたが、2020年4月以降、多焦点レンズは基本的に「選定療養」へと移行しています。

高額療養費制度は「使える」が「限定的」

「高額療養費制度」は1カ月の医療費が自己負担限度額を超えた場合に、その超過分が払い戻される公的制度ですが、多焦点レンズ手術においては注意が必要です。

制度の適用範囲

選定療養の場合、高額療養費制度の対象となるのは「保険適用部分(手術基本料など)」のみです。最も高額な「レンズの差額代金」や、自由診療の費用は対象外となります。

シミュレーション:払い戻しはあるのか?

一般的な所得の方(年収約370万~770万円、70歳未満)で、自己負担限度額が「約8万円」の場合を想定してみましょう。

ケース1:片眼のみ手術した場合(払い戻しなし)

保険適用部分の自己負担額が約4万5千円〜7万5千円程度の場合、限度額の8万円に届かないため、高額療養費制度による払い戻しはありません。実質負担額 = 保険適用分(全額支払) + レンズ差額代 となります。

ケース2:両眼を同じ月に手術した場合(払い戻しあり)

両眼手術で保険適用部分の自己負担額が合計15万円になった場合、限度額8万円を超えた「約7万円」が払い戻されます。
このように、制度を最大限活用するには、両眼の手術を同じ月に行う(月またぎにしない)ことがポイントです。

ケース3:住民税非課税世帯の場合

自己負担の上限が3万5,400円と低いため、片眼手術(保険部分約4万5千円と仮定)であっても、差額の約9,600円が戻ってくる可能性があります。

医療費控除でさらに負担軽減

高額療養費制度でカバーできない「レンズ代(自由診療分)」についても、「医療費控除」という税制優遇制度は利用可能です。

1年間(1月〜12月)に支払った医療費の合計が10万円を超えた場合、確定申告を行うことで所得税の一部が還付されます。高額療養費で戻らなかった分も対象になるため、領収書(再発行不可)は大切に保管し、忘れずに申告を行いましょう。

医療費控除については下記のページもご覧ください。

安心して手術を受けるために

多焦点眼内レンズの手術は費用が高額になりがちですが、「同月に両眼手術を受けて高額療養費制度を使う」「確定申告で医療費控除を受ける」といった工夫で実質的な負担を抑えることが可能です。

ご自身の生活スタイルや予算に合わせ、どのレンズ・どの診療区分が最適か、信頼できるクリニックでしっかりと相談することをお勧めします。