多焦点眼内レンズと高額療養費制度

多焦点眼内レンズとは?

多焦点眼内レンズは老眼や白内障の治療に用いられるレンズで、近くも遠くもはっきり見えるというメリットがあります。単焦点レンズとの最大の違いは、眼鏡に依存しない生活が実現しやすい点です。

近年はレンズの性能が飛躍的に進化しており、自分の視力状態に合わせて焦点を調整できる「ライトアジャスタブルレンズ」なども登場。YouTubeやSNSでの紹介も相まって、「人生が変わる手術」として話題を呼んでいます。

高額療養費制度と自由診療の関係

「高額療養費制度」は1カ月の医療費が自己負担限度額を超えた場合に、その超過分が払い戻される公的制度です。ただし注意すべき点として、保険が適用される診療部分のみに制度は適用されます。

多焦点眼内レンズによる手術はレンズ費用部分が自由診療(選定療養)扱いとなるため、その分は高額療養費制度の対象外です。検査や薬代・手術の一部など、保険が適用される範囲は申請できます。

医療費控除でどこまで軽減できるのか

高額療養費の対象外となる自由診療費用についても、医療費控除という制度を使えば一定額を税金から差し引くことができます。

1年間(1月〜12月)に支払った医療費の合計が10万円を超えた場合、確定申告を行うことで控除対象になります。控除額は所得に応じて異なりますが、数万円〜十数万円が戻るケースも。なお、確定申告には「医療費控除の明細書」が必要で、領収書は再発行できないため、必ず大切に保管しておきましょう。

高額療養費制度を使った場合の費用シミュレーション

まず大前提として、「自由診療」は健康保険の対象外のため高額療養費制度が使えません。つまり自己負担はそのままで、片眼あたり75万円全額支払いとなります。

一方、「選定療養(多焦点レンズ)」は手術の基本部分は保険が適用され、高額療養費制度の対象になりますが、レンズ代などの差額部分には制度が適用されません。
たとえば、70歳未満で一般的な所得者(年収約370~770万円程度)の場合、保険適用部分の自己負担上限は約8万100円です。仮に手術の保険適用部分が約15万円程度とすると、その3割負担は4万5千円程度なので、上限に届かず払い戻しはありません。よって、実際の負担額はこの4万5千円にレンズ代の差額を加えた金額になります。

選定療養(2焦点・焦点深度拡張型:片眼24万~26万円)

この金額のうち約9万~11万円がレンズ代だと仮定した場合、4万5千円+レンズ代9万~11万円=合計13万5千円~15万5千円が自己負担となります。

選定療養(3焦点・連続焦点:片眼28万~38万円)

レンズ代は約13万~23万円と仮定すると、4万5千円+13万~23万円=合計17万5千円~27万5千円が自己負担です。

住民税非課税世帯の場合

この場合、自己負担の上限は3万5,400円なので、保険適用部分の4万5千円のうち約9,600円が後から戻入予定です。よって自己負担額は次のようになります。

2焦点:3万5,400円+レンズ代9万~11万円=12万5千円~14万5千円
3焦点:3万5,400円+レンズ代13万~23万円=16万5千円~26万5千円

注目されている「選べるレンズ」最前線

2025年現在、話題の多焦点レンズは以下のようなものがあります。

  • ライトアジャスタブルレンズ:術後の紫外線照射で焦点を微調整できる革新レンズ
  • EDOF(焦点拡張型)レンズ:ぼやけを軽減し、自然な見え方を再現
  • トリフォーカルレンズ:遠・中・近の3焦点に対応し、日常生活の快適さを向上

これらのレンズはそれぞれに価格や見え方の特徴が異なるため、クリニックでのカウンセリングが重要です。

安心して手術を受けるために

多焦点眼内レンズの手術は費用こそ高額ですが、制度をうまく活用することで実質的な負担を抑えることが可能です。高額療養費制度や医療費控除について正しく理解し、信頼できるクリニックを選ぶことが、後悔のない選択につながります。見え方の質にこだわる方ほど、事前の情報収集がカギとなるでしょう。