白内障手術で視力は回復する?

白内障手術は、白濁した水晶体を透明な眼内レンズに変えるので、視界は大きく変わります。視界は変わるものの、本当に視力が回復するかは不安。変化に慣れるための期間や手術後の視力変化のリスクについて解説します。

手術で視力は
回復するのか

レンズを挿入するステップのイラスト

白内障は目の水晶体が白く濁る病気なので、手術を受けて透明な眼内レンズを挿入すれば、視界はクリアになり、視力は回復するでしょう。

しかし、手術に用いる眼内レンズは人の目とは異なり、ピント調節の自由度がなくなります。視力検査は一定の距離を空けて行うので、視力検査の際に「見えにくい」=「検査時の数値が悪くなった」=「視力が落ちた」と感じる場合も。

これは、近くにピントが合う眼内レンズを挿入した場合に起こる可能性があります。ただ、ピントが合わず見えにくい状態は、メガネを用いて矯正が可能。焦らず眼科に相談し、メガネなどでの調整方法を医師と相談すれば、問題なく生活できるでしょう。

また、視力が「回復する」かどうかは、挿入する「レンズの選び方」が大きく影響をします。

白内障手術のレンズの種類

白内障のレンズは、見える距離に応じて、大きく2種類あります。

  • 単焦点レンズ:ピントの合う距離はクリアにみえるが、範囲外を見るには、眼鏡が必要。
  • 多焦点レンズ:ピントの合う距離が広いため、眼鏡への依存度が低い。

単焦点レンズか、多焦点レンズかによって、クリアに見える範囲やレンズの値段が変わります。

手術の際は、医師と相談をして、自分の生活スタイルを考慮したうえで、自分に合ったレンズを選びましょう

焦点距離のイメージ画像

回復するまでの期間

白内障手術を受けた後、視力や視界が安定するまでに2~3ヶ月程度かかると言われています。白内障の手術は、目のレンズに切り込みを入れて白濁したタンパク質を取り除き、眼内レンズを挿入するので、目の傷口が回復するまで見え方は安定しません。

また、白内障の手術に用いる眼内レンズは、必ずしも無色透明ではなく、黄色などの色が少し入っています。これは、紫外線をはじめとする様々な光がそのまま目の奥に届くことを防ぐためで、軽いサングラスのようなものです。

黄色のはいった眼内レンズを目にいれれば、その視界は当然黄色っぽくなりますが、その黄色も時間経過とともに慣れてきて今まで見えていた色と同じようになります。

手術後に視力が落ちることはある?

水晶体は、透明な袋(これを水晶体嚢と言います)に包まれています。

白内障手術では、まずこの袋の前側(前嚢)を丸く切り、その後、濁った水晶体を超音波で細かくして吸い取ります。そして、袋の中に眼内レンズを入れます。

眼内レンズを入れたとき、袋の内側には水晶体の細胞が残こっており、これが袋の後ろ側(後嚢)に広がって、濁ってしまうことがあります。

これが進むと視力が悪くなり、この状態は後発白内障と呼ばれます。

後発白内障は手術後数ヶ月~数年で発症する場合が多いですが、レーザー照射によって回復が可能です。

その他にも、手術後の点眼など、医師の指示通りにしていない場合、細菌感染によって術後眼内炎になり視力が低下する事例もあります。視力の変化を感じたときには、医師への相談が必要です。

白内障手術後にみられる症状

まぶしさや色の変化

白内障手術では、濁っていた水晶体の代わりに透明なレンズを挿入します。そのため、手術直後は光を強く感じたり、景色が以前より白っぽく見えることがあります。通常は時間の経過とともに慣れていき、次第に自然な見え方になっていくため、過度に心配しなくても大丈夫です。

異物感

術後の眼は傷ついている状態なので、しばらくはゴロゴロやチクチクとした異物感が出やすくなります。これは炎症やドライアイが関係していることも多く、医師の指示どおり点眼薬を続けることで落ち着いていく場合がほとんどです。

一過性の眼圧上昇

手術後は眼内に変化が起こるため、一時的に眼圧が上がることがあります。特に高度な白内障があった方や、緑内障の既往がある方は注意が必要です。眼科で定期的に眼圧を測定してもらい、早めに対処することが重要です。

飛蚊症(ひぶんしょう)

もともと存在していた硝子体の濁りが、視界がクリアになったことで強調される場合があります。新しい浮遊物が増えていなければ多くは問題ありませんが、急に数が増えたり、光が見える場合には早めに受診しましょう。

後発白内障

術後数ヶ月から数年後に、レンズを入れた袋が再び濁ることで視界がぼやける場合があります。これは後発白内障と呼ばれ、専用のレーザー治療によって比較的簡単に視力を回復させることが可能です。

眼内レンズの偏位・脱臼

何らかの衝撃や加齢によって、装着したレンズの位置がずれることがあります。視力低下が急に起こる際は、できるだけ早く眼科を受診し、必要に応じて再手術や調整を受けましょう。

嚢胞様黄斑浮腫

黄斑部にむくみが生じる症状で、糖尿病網膜症の既往がある方などはリスクが高まります。視界が歪む、物が見えにくいなどの症状が出た場合は、点眼治療や薬物療法など適切なケアが必要です。

術後眼内炎(感染症)

手術創口から菌が侵入し、深刻な炎症を引き起こすことがあります。予防のためには、処方された点眼薬を決められた回数で続けることが大切です。強い痛みや急激な視力低下を感じたら、ただちに専門医へ連絡しましょう。

まとめ

白内障手術は、水晶体内の白い濁りを除去し、眼内レンズを入れることで、視力の回復が期待できます。

手術を受けた後すぐに視界がクリアになるため、見え方も大きく変わります。手術の傷の回復や視力が安定するまでに、2~3ヶ月程度の期間は必要です。

手術後の見え方について、入れた眼内レンズによって、ピントの合う範囲が異なることは認識をしておくといいでしょう。

手術で入れる眼内レンズによって術後に裸眼でピントが合う範囲が異なります

白内障手術の後に、裸眼で生活をしたい方は、多焦点眼内レンズを選ぶといいでしょう。

単焦点レンズと多焦点レンズの違いをまず知った上で、クリニックを選ぶようにしましょう。

▼表は横にスクロールできます

単焦点レンズ 多焦点レンズ
特徴 ピントが合う距離は1点。
近くまたは遠くに合わせて選択する必要があるが、1点を鮮明な画質で見ることができる
ピントが合う距離は多数。
近くも遠くも見えやすくなり、中には中間距離にピントが合うものも存在する
メリット ・色の濃淡の判別がしやすい
・まぶしさを感じるハロー・グレア現象が起こりにくい
・眼鏡を外した生活が期待できる
・パソコンやスマホ、スポーツなど、生活上様々なシーンに適応できる視力になる
デメリット ・手術後は眼鏡が必須になる ・色の濃淡の判別がしづらいことがある
・ハロー、グレア現象が起こりやすい
治療費 治療費・レンズ費共に保険が適用
※レーザー手術の場合は自由診療となる
【厚労省認可あり】
治療費:保険適用
レンズ費:自由診療
【厚労省認可なし】
治療費・レンズ費共に自由診療
向いているのはこんな人 ・費用を抑えたい人
・画質の鮮明さを重視する人
・色の濃淡の判別が必要な仕事、趣味を持っている人
・できるだけ眼鏡を使いたくない人
・目に白内障以外の病気がない人
・完璧を求め過ぎない人

単焦点眼内レンズの画像:

画像参照元URL:https://eye-care-clinic.jp/tokyo/treatment-multifocal

多焦点眼内レンズの画像:

画像参照元URL:https://eye-care-clinic.jp/tokyo/treatment-multifocal

多焦点眼内レンズは、裸眼での生活を快適にすることを目指しています。

保険適応外になりますが、
ちょっとしたことでいちいちメガネやコンタクトをしなければいけないことや、作り替えに不便を感じている人は、
多焦点眼内レンズを選ぶことで、メガネやコンタクトを装着する煩わしさから解放されるでしょう。

単焦点レンズか多焦点眼内レンズかの選択だけでなく、眼内レンズには様々な種類があるので、
眼の状態やライフスタイルを踏まえ、医師とよく相談した上で決めることをおすすめします。

監修者情報

松本行弘 医師
多焦点眼内レンズの豊富な知識と経験を有する医師
松本理事長写真写真引用元:アイケアクリニック公式HP(https://eye-care-clinic.jp/doctors)

年間2000件を超える白内障手術実績を有する「アイケアクリニック」の松本医師。(2023年10月1日調査時点)。患者の「見え方」に対する幅広いニーズに対応するため、20種類以上の多種多様な眼内レンズを用意しています。
その知見の深さから、公式Youtubeチャンネル(※)で、白内障手術や多焦点眼内レンズの正しい情報発信にも取り組まれています。

※公式youtubeチャンネルへ遷移します。

    経歴
  • 獨協医大越谷病院 眼科
  • University of Maryland, Department of Ophthalmology, Research Fellow
  • University of Washington, Biological Structure, Visiting Assistant Professor
  • 獨協医大越谷病院 眼科 准教授
  • 獨協医大越谷病院 眼科 緑内障・黄斑・PDT・角膜の各専門外来主任
  • を歴任

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