多焦点眼内レンズを入れたものの見え方に違和感がある場合、入れ替え手術を検討する選択肢があります。本記事では手術を検討する際のリスクや注意事項などを解説。ぜひ参考にしてください。
多焦点レンズを使った白内障手術を受けたものの、予測されたほど視力が回復しなかったり、左右の目で見え方のバランスが狂ったりするケースは起こり得ます。
このような視力に関する問題の原因としては、患者本来の視機能と事前設定したレンズの度数が合っていない「屈折誤差」や、乱視を矯正しきれずに文字が多重化する「残存乱視」、片目だけにレンズを挿入することで左右の目の視差が狂う「不同視」、またそれらに伴う眼精疲労や偏頭痛などが考えられるでしょう。
多焦点レンズを挿入することで、夜間に光を見た際、光輪や光のにじみといったハロー・グレアが発生する場合があります。ハロー・グレアは通常、レンズを挿入してから徐々に改善しますが、術後数ヶ月が経過しても改善されなかったり、電灯や自動車のライトがまぶしすぎて生活に支障を来したりといった場合は、速やかに医師へ相談することが大切です。
また、ピント調節機能そのものは改善して視力検査の結果は良いものの、視界の色が全体的に白く濁ったり、明暗の見え方などに極端な違和感を抱いたりする場合、「ワクシービジョン」などが発生している可能性もあります。
その他、ものが多重に見える「ゴースト現象」も想定される症状です。
多焦点レンズを挿入してからハロー・グレアを強く感じたりピント調節が難しかったりする原因として、「脳の順応期間(ニューロアダプテーション)」が関係しているとされています。これは脳がレンズ機能や視界の変化に慣れていないことで起こる現象であり、ニューロアダプテーションによる見え方の違和感は、むしろ視力が改善しているからと前向きにとらええましょう。
※参照元:近藤香里ら著(2010)、「回折型多焦点眼内レンズ症例の年代別の成績(日本視能訓練士協会誌 第39巻)」【PDF】 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jorthoptic/39/0/39_039F118/_pdf/-char/ja
眼内レンズが何かしらの原因によって落下したり、位置がずれたりする問題も無視できません。これは手術が適切に行われていたとしても発生する可能性があり、例えばレンズの位置がずれたり傾いたりすることで、不正乱視が発生して見え方は著しく悪化します。
また目の中でレンズを支える繊維(チン小帯)に問題が生じると、将来的にレンズが硝子体側へ落下するリスクもあるため、異常を感じた際は速やかに医師へ相談してください。
眼内レンズを交換する際、患者の現在の視力やレンズの度数などを考慮して交換用レンズの度数や種類を選定し、事前にどの程度の視力改善が得られるか予測します。しかし常に想定通りの結果が得られるとは限らず、レンズ交換だけでは十分な視力回復効果を得られない場合もあるでしょう。
なお、交換手術は初回手術より合併症が出やすく、視力安定までのダウンタイムも長くなりがちです。
眼内レンズ手術を受けた患者のおよそ20%で、5年以内にレンズを包む「袋」が濁ってしまう後発白内障が発症するとされています。ただし後発白内障は軽度であれば治療不要であり、治療もYAGレーザーなどのレーザー治療で簡単に行えるため、見え方などに明らかな違和感を抱いた場合は医師へ相談しましょう。
※参照元:日本白内障学会 http://www.jscr.net/ippan/page-003.html
入れ替え手術によるリスクとして、まず感染症や網膜剥離といった目の手術そのものの合併症があります、加えて、入れ替え手術は初回手術よりも難易度が高くなりやすく、また術後にどの程度の視力回復や症状改善が期待できるのか正確な予測も困難です。
白内障の治療として手術を受ける際、基本的に多焦点眼内レンズは保険診療と比較して自己負担額が大きくなり、医療機関によって金額差もあります。ただし条件によって一部治療が保険適用となったりレンズの種類によって選定療養制度の対象になったりする可能性もあり、詳細は医師に確認するようにしましょう。
多焦点眼内レンズがどうしても自分に合っていないと感じた人は、改めて単焦点眼内レンズに交換することも検討すべきでしょう。なお単焦点眼内レンズはハローグレアが軽減されて視界が明瞭になる反面、ピントの合う位置が限定されるため老眼鏡や眼鏡を使用することが前提となります。
多焦点眼内レンズには様々な種類が存在しており、最初の手術で使用したレンズとは異なるタイプのレンズを検討することも可能です。
遠近2焦点タイプの多焦点眼内レンズから、遠・中・近の3距離に対応した多焦点眼内レンズ(3焦点タイプ)に交換することで見えやすさが改善される可能性もあります。
多焦点眼内レンズには「回折型」と「屈折型」の2つの構造があり、それぞれに見え方や視界の状態が異なります。そのためレンズの構造を別のものに変更することで、改めて視力改善が叶えられる可能性もゼロでありません。
白内障の治療やレンズの性能については日進月歩で研究が続けられており、過去に使用したレンズよりも最新式のレンズの方が、高性能で視力改善やストレス軽減に有用というケースもあるでしょう。