白内障手術のリスクは?

手術中のリスク

破嚢

白内障手術では、白濁した水晶体を包んでいる袋(水晶体嚢)を温存し、その中に人工のレンズ(眼内レンズ)を挿入します。しかし、何らかの理由でこの水晶体嚢が破れてしまうことを「破嚢」と呼びます。

破嚢は術中の操作によって生じる場合が多いのですが、白内障が高度に進行している患者さまや、過去の外傷や合併症の有無などでリスクが変わってきます。まれに手術後に外力が加わった際などに生じるケースもあります。

破嚢が起きると、眼内レンズが予定位置に収まらなかったり、硝子体や網膜に影響を及ぼしたりするリスクも出てきます。万が一破嚢が生じた場合には、適切な処置で問題を最小限に抑えることが非常に重要です。

水晶体の落下

白内障が進行した状態や、強い外力が加わった際などに水晶体の一部が落下してしまうことがあります。これは術前の白内障が重度で、レンズを支えているチン小帯が弱っている場合などにリスクが高まるとされています。

落下した水晶体が硝子体内や網膜近くに移動すると、視力低下や眼圧上昇を引き起こす場合があります。場合によっては視界に影や異物感が生じることも。水晶体落下が確認された場合には、硝子体手術などで取り除き、必要に応じて新しいレンズの挿入を検討します。

術後に多い症状ではありませんが、手術時には十分に注意が払われており、万が一水晶体が落下してしまっても迅速な対応を行うことで、視力への影響を最小限に抑えることが可能です。

手術後のリスク

術後感染(眼内炎)

白内障に限らず、手術をした場合には手術部位からの感染リスクがあります。

感染には傷口から生じる感染と眼内炎というものがあります。

手術中を含め施術前後においても、感染が起きないよう細心の注意が払われており、白内障手術は、目のレンズの部分を約2mm程度切り開くのみなので、手術にかかる傷口からの感染リスクは非常に低いと言えます。

しかし、皮膚の傷口と違って、術後しばらく目を覆って生活することは困難です。無意識に目を掻いてしまう可能性があるため、感染を防ぐ目薬をさすよう指示があります。できるだけ感染が起きないように、保護ゴーグルをかける、目を掻かないことは必須です。

非常に稀ではありますが、主として術中トラブルが原因となり、術後感染が起きて眼内炎という病気になると最悪の場合失明してしまう可能性ありますので、医師は術中トラブルには細心の注意が必要になります。

眼内炎の発症は術後早期に生じることが多く、手術翌日以降に眼痛や充血、視力低下などが急激に増悪する場合には、できるだけ早く受診しましょう。

眼圧上昇

白内障手術が終わった後に、眼圧が上がる場合があります。

眼圧が上がった状態が続き、視神経に障害が生じた状態を「緑内障」といいます。しかし白内障手術後の眼圧上昇は、ずっと続くものではなく一過性のものです。多くの方は過度に心配する必要はなく、医師の指示通り目薬をさすなどの対応をすれば問題ありません。

ただし、手術前の検査で「眼圧が高い」と言われた場合や、緑内障で治療をしている場合には、術後の眼圧管理はより重要です。

最近では白内障手術と同時に行うことが可能な緑内障手術もあり、主治医に確認をしてみるのも良いでしょう。

後発白内障

白内障手術ではレンズ(水晶体)の白濁した部分を取り除いて、透明な眼内レンズを元々のレンズの周囲を覆っている袋の中に入れます。この「レンズの入っていた袋(水晶体のう)」に残っていた水晶体細胞が白濁することで白内障に。この症状は手術後5年で約20%の方に起こると言われています。

後発白内障が進行すると光が目の奥に届きにくくなるので視力が低下します。後発白内障は、濁ってしまった部分にレーザーで穴をあけることで治療可能。短時間で痛みもほとんどなく治療可能なので、こちらも過度に心配する必要はありません。

飛蚊症

白内障手術で、白濁したレンズを透明な眼内レンズに変えると「飛蚊症」を自覚される可能性があります。

飛蚊症は、目の中にある硝子体という透明なゼリー状のものに濁りがあるために、目の前に蚊のような虫や糸くずが見えるように感じる症状です。

しかしこれは、白内障でかすんでいた視界が、レンズの透明化によって視界がクリアになったため気になるようになるというものです。つまり飛蚊症はもともと発症していたということになります。

網膜剥離

飛蚊症には生理的なものと病的なものがあります。生理的な飛蚊症は、先ほど述べたもので、加齢によることが多く、基本的には経過をみることが多いですが、病的なものは手術をした数日後から急激に自覚症状が顕著になり、その原因として網膜剥離を考えておく必要があります。

早期に発見すれば、レーザー手術などで治療が可能ですが、時に手術を要する場合もあります。白内障手術後の視界に蚊のようなものが気になった場合には、眼科を受診してください。

眼内レンズ脱臼

白内障手術は、もともとレンズが入っていた袋(水晶体嚢)に眼内レンズを挿入します。この水晶体嚢は、チン小帯という組織で支えられていますが、目に衝撃があった場合や加齢などでこのチン小帯がもともと弱くなっていると、眼内レンズを入れた水晶体嚢がずれてしまうことがあります。これが眼内レンズ脱臼と呼ばれるものです。

ずれ方にもよりますが、眼内レンズが本来あるべき位置にないので、視力が低下します。眼内レンズ脱臼は自然には治らないため、手術が必要です。ずれた水晶体嚢と眼内レンズを取り出し、新しい眼内レンズを目に直接縫い付けるなどの処置を施します。

ハロー・グレア

ハロー・グレアとは、光のまぶしさやにじみを感じる症状で、特に夜間に街灯や車のヘッドライトを見ると、光が拡散して輪のように見えたり、まぶしく感じたりします。多焦点眼内レンズを入れた場合や瞳孔の大きさによって生じることがあります。

ハロー・グレアは術後の視界が急にクリアになることで、自覚しやすくなる現象とも言えます。一部の方はしばらくすると気にならなくなりますが、強い症状が続く場合には、医師による原因の究明や眼内レンズの度数調整などが検討されます。

多くの場合、日常生活に支障をきたすほどではないため、術後数か月で自然に慣れるケースが大半です。ただし、強いまぶしさが持続するようでしたら、症状緩和のための専用メガネや調整を検討することも有用です。

ハロー・グレア現象
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